痩せた月

こんにちは世界

鏡のセルリアン(お題箱より、お題『鏡』)

「こんな話を知っているかい?」

セルリアンの騒動が終わった後、祝会(ロイヤルさん曰く、『無事セルリアンを倒せた&かばん何の動物か分かっておめでとうの会』)を兼ねて色んなフレンズとロッジに泊まっていた時に、オオカミさんはこう切り出しました。

僕には、オオカミさんのこの話が本当なのか、作り話なのかはその後聞いていないので分からないのですが、ちょうど夜だったことと、セルリアン騒動の後だったこともあり、ロッジにいたフレンズをギョッとさせました。



『鏡のセルリアン』って言うのが昔いたらしいんだ。そう、鏡。鏡って何、だって? ほら、ロッジにあるだろう、自分の姿が映るアレさ。

『鏡のセルリアン』っていうのはその名の通り身体が鏡のセルリアンさ。青でも赤でも黒でもない。色で形容できないとっても珍しいセルリアンだ。だけど、以前話したような高速で動いたり、夢に現れるといった特別な行動をするセルリアンじゃないんだ。

『鏡のセルリアン』は、一般に見られるセルリアンのように、フレンズを追う。サンドスターを食べる。光るモノを追う。弱点は石。水に弱い。だけど、一点だけ、ただ一点だけ普通じゃないんだ。鏡の性質よりももっと重要な性質。

それは、食べられても元の動物には戻らない。

お、いい反応するねえみんな。今日はいい顔がたくさんいただけそうだ。

何で元の動物に戻らないのかは私にはわからないさ。昔の話だからね。今じゃない時、ここじゃない場所さ。

さて、それなら『食べられても安全なんじゃないのか』と考えるフレンズもいるだろう。食べられて見たいと思うフレンズさえいるかもしれない。セルリアンに食べられるのは精々一生に一度、しかもそれが一生の終わりだ。安全に経験出来るなら、臭いものを嗅ぐような感覚でセルリアンに入りたくなるのもわかる。全身がセルリアンの肉に覆われて、手足の指を包み込み、爪の間までセルリアンに支配される。一度は味わって見たいものだ。

かばんは別さ。食べられた時の記憶はないんだっけ? そうかあ、それは残念。いいネタになりそうなんだけどなあ。


話が逸れたね、『鏡のセルリアン』はフレンズを動物には戻し得ない。それはいいかな?

でも、それを安全と捉えるのは浅はかな考えだ。

確かに私が聞いた話によると、実際に食べられたフレンズはフレンズの姿で出て来たんだ。

話が前後するけど、ところで合わせ鏡を知っているかい? 鏡を2つ向かい合わせて置くんだ。その間に手とかを入れてみるとどうなると思う? 

お、かばん正解だ。一方の鏡に映った手が、もう一方の鏡に映り、その映った鏡がまた一方の鏡に映り……を繰り返す。つまり、無数の手が鏡に映るんだよ。

ここまで言えば分かったかもしれない。『鏡のセルリアン』に食べられたフレンズは、合わせ鏡の要領で自分の姿を見たんだ。無数のね。

ただし、食べられたフレンズが見た景色は二枚の合わせ鏡とは比にならない、おぞましいものだったという。

四方八方が鏡の部屋を考えたことがあるかい?上も下も、前後左右も鏡の部屋。どこを見ても自分、自分、自分だ。一種のトライポフォビアを覚えるような光景を見るだろう。

セルリアンの中は、四方八方どころか、角張った所のない鏡の部屋だ。どんな光景が見えるか想像がつかない。

食べられたフレンズは、1日後に救助された。こんなに時間も経っていたら、元の動物に消化されて外に出ているはずなのに、粉々になったセルリアンからフレンズが出てきたんだ。

これでめでたしめでたし、じゃ終わらないんだよ。

出てきたフレンズは普通じゃなかった。より正確にいえば、発狂していた。顔面のすべての筋がたるんでしまい、引っかき廻したように乱れた髪の毛、血走っていながら、異様に空ろな眼、そして口をだらしなくひらいて、ゲラゲラと笑っている姿は、もう見られたものではなかったらしい。

どうして狂わなければいけなかったのか。それは、鏡の球体に入ってみれば分かるさ。



「おかしくなっちゃったフレンズはどうなったのー?」

「さあね、そこまでは知らないよ。でも、”おかしなフレンズ”を見たいなら鏡の前に行くといいさ、サーバル



元ネタは江戸川乱歩の鏡地獄です。一部丸々コピペしてます。